津波に負けなかったランドセル
ある日、当店にかかってきたお客様からの1本の電話がありました。
詳しいお話を伺いますと、東日本大震災にあわれたお客様からのご連絡でした。
『以前、そちらのお店で購入したランドセルを修理してほしい』
『震災後、約2ヶ月の間行方不明になっていたランドセルが見つかった』
『約2ヶ月の間、津波に流され海水に沈んでいたランドセルがランドセル本体に名入れ(名前入れ)をしていたおかげで子供の手元に戻ってきた』
とのことでした。
『ランドセルについては、新たに購入するのではなく、子供が数年間使用した思い入れのあるこのランドセルをつかいたい』との思いから修理を希望されました。
その思い入れあるランドセルは、ロック部分の金具が動かなくなってしまっているのでなんとかならないでしょうかとのこと。
お客様は当店にてランドセルを購入されたのですが、インターネットショップのどのお店で買われたかまでは覚えていなかったそうです。
ですが、ランドセルの彫り込み名入れを行っているショップが当店しかなかったため、『ランドセル 名入れ』と検索をされ、わざわざご連絡を下さいました。
数日後、当店へと届いたランドセルは、津波から帰ってきたという現実をまざまざと感じさせるものでした。
きれいにしていただいてから送って下さったのですが、ぬぐいきれなかった隅の泥、かすかにこぼれる砂、海水でさびた金属部分。
ただ、とてもうれしく感じたのは名入れの部分。色落ちや変形もなく、しっかりときざまれた名前は、まるでランドセルが「津波には負けなかったよ」といっているようで、困難にも負けない強い思いがあふれていると感じました。
商品を見て大変感動をした店長は、「どうにかしなければならない!これはNOMADO1230の使命だ!」と強い決意のもと、各関係業者へ連絡を取り始めました。
このランドセルを製造メーカーに届けたうえでいろいろ点検していただいたところ、「ランドセルのロック部の修理自体は可能ですが、海水につかったランドセル本体の強度を保証することができません」との返事でした。
ですが、店長の必死の説得がメーカーに伝わり、特別対応にて修理していただけたので、お客様の元へとランドセルをお届けすることができました。
いまでもふとしたときに、「あのランドセルはどうなったかな?」と思い出すことがあります。
たくさんの方々が大変な思いをされた東日本大震災。たくさんの方々が心を傷めたときに、少しずつのあたたかい気持ちが集まって、きれいなものに生まれ変わった気がしました。